2020-01-01から1年間の記事一覧

夏の庭

人が死ぬところを、初めて目の当たりにした。 執拗なまでに雨が降り続ける長梅雨がようやく明けたのは、七月末のことだった。梅雨の終わりには、いつも腹立たしいほどの青空が広がっている。大雨は各地に甚大な被害を与えたが、そんなことは歯牙にもかけない…

穏やかな日々

ここ最近ちっともギターが上達しない。新しい技を覚えても自分の曲に落とし込めるほど磨けない。ライブをしなくなって、スタジオに入らなくなって、音楽に対して少しずつ無関心になっていく。 ついでに本もめっきり読まなくなって、とことん言葉に大雑把にな…

school girl complex

こんな僕も、かつては高校生だった。 当時の僕は、今となっては信じられないほどバイタリティに溢れていた。 毎日が面白くて、仕様がなかった。 自由奔放な人だらけでてんでまとまりがないクラスも、お互いの価値観を認め合い、技を高め合った軽音楽部も、毎…

春の歌

‪件のなんとかウィルス。麦酒みたいな名前のウィルス。そういえばあの麦酒、大学生の時に初めて飲んだのは、大好きなハンバーガー屋だった。 僕はそれまで、日本製の麦酒ばかり飲んでいたんだ。けれどメキシコ産まれのそれに小さくカットしたライムを入れて…

summer complex

幼少時から地球温暖化の深刻さについてはよく聞かされていた。耳にはたこを通り越していかが生えてきた。そのぐらいしつこく、しつこく、何度も聞かされた。 地球温暖化の原因はオゾン層の破壊で、そのまた原因は便利になり過ぎた人間の生活だとか。 便利で…

ときには昔の話を。

‪あまりにも寒い冬の夜だった。風がびゅーびゅー吹き付けて、家の隣にある廃屋の窓や建て付けの悪い扉ががたがた音を立てて揺れた。寒さに耐えかねた僕は、「こちとら風呂上がりなんだぞ、風呂上がりなのにどうしてこんなに寒いんだ?馬鹿にしていやがる」と…

あたたかく、気恥ずかしく、ゆるい

「俺、バンドやる。」 そう言って就職活動を蹴飛ばした日から、なんとなく考えてはいた。 夢を追いかけ、そこに敗れた人の惨たらしさたるや、いったいどれほどのものだろう。 なんにも成果を残せず、鳴かず飛ばずの日々。 いくつになってもコンビニエンスス…

君の青い車で海に行こう

「なんとかハウス」っつー名前の、僕がとても嫌いな番組がありまして。 美男美女が寄り集まって脚本に沿った演技をしながら恋愛模様を描く、あれです。「りありてぃ」なんてモノを売りにしているテレビ番組が軒並み嘘くさいのはなんでなんだろうね。 まあ、…

おあいにく様

近ごろ元バンドマンの悲しいツウィートがあまりにも目に付く。呟きというにはあまりにもおぞましく、ウィットに富んでいなくて、攻撃的な、それらの言葉。 ‪解散した後で元メンバーの悪口言うぐらいなら、最初から「俺はあいつらのことが嫌いになったからバ…

ガソリンの揺れかた

四日市ドーム、 ハンドボール大会、 百円ショップのインソール。 バスドラムの揺れ方で人生の意味がわかった日曜日。 たとえばそう、動く歩道を降りた後のあの感じさ。 たとえばそう、マックで紅茶を頼んだときにティーバッグが二つ付いてきて絶対に一個持ち…