飯屋って苗字、メシアみたいでかっこいい

あけました。2024年。

 

めでたい人も、全然めでたくない人も、今日まで生きてきてえらい。今日まで生きてこんな全然売れてないミュージシャンのブログ見にきてくれてありがとう。

 

それだけで君がとてもやさしい人だってわかる。僕の歌聞いて僕のこと気にかけてくれる人はみんなとてつもなくやさしい人だ。それだけはわかる。君がやさしいままで、ときどき間違えたり後悔したりしても、それでもやさしいままで今日まで生きてくれたこと、少なくともそれは僕にとって嬉しいし、僕がこの世界を生きる理由のひとつになってるよ。だから、生きててくれて本当にありがとう。

 

それで本題なんだけど、僕は昨日SLYで2024年最初のライブをしてきた。

 

年を跨いだからなんだという話ではあるものの、僕としてはライブの間隔が3週間ぐらい空くとそれだけでライブに対する姿勢が揺らぐことがあるから、すこし心配していた。

 

SLYは僕が7年ぐらい前にはじめてアコースティックで出演したライブバー。

 

あの頃自分が出ていたライブは、もううまく思い出せない日が多いんだけど,アコースティックでライブすること自体珍しかったのもあって、SLYのことだけはずっと覚えていた。

 

マスターのシンゴさんが、名古屋で一番歌が上手いのではないかと思わされるほどの圧倒的な歌唱力の持ち主であることも、強烈に印象に残っていた要因であったり。

 

そんなシンゴさんが、めずらしくブッキングライブを組むという。僕にその白羽の矢が立った。

 

その時僕の心にあったのは、

「7年前とは違うぜ」なんてところを見せつけたい虚栄心と。

「でもそんなに成長してないかもしれない」という自信のなさと。

「シンゴさんが選んだ演者さんなんてみんな良いに決まってるから俺なんかがそこに並んでいいのかな」という心配と。

「2024年初のライブは素晴らしい演奏をして良いスタートダッシュを切りたい」というとてもくだらない意気込みと。

 

そんな思いを抱えて臨んだ。

 

けどね、共演者の方々のライブ見てたら、そういうの全部吹き飛んだよ。

 

「ちゃんとしたライブに出るのは初めてなんです」っていうタクミさんのあの緊張感と、それでも今日この日を楽しもうっていう姿と。なにかに挑戦する姿はいつだってきれいだ。初めてライブする人がいるってだけで、もうその夜はうつくしいんだよな。

 

ヅミキさんは、どこまでも自由で、次になにを言い出すか予測がつかなくて。そんな姿がSLYにいた人たちの心を瞬時にときほぐした。それなのに、歌い始めると、きっとこの人はものすごく繊細できめ細やかな心で、世の中の美しさも汚濁も見つめてきたんだろうなと想像してしまうほど懐が深くて。必要以上に語りすぎない歌の余白が、どこまでも心地よかった。

 

そして、自分の出番の前に盛大に泣かされてしまった。

櫻小町さんの、人生全部乗せたようなライブが、あまりにもうつくしくて、ぼろぼろに泣いてしまった。

 

だってあの人、絶対にやさしいんだ。

ライブの前にDMでわざわざ挨拶してくれて、当日も初対面の僕に屈託のない笑顔で挨拶してくれて、ベテランなのに全然偉そうじゃなくて。

 

そんな人が、自分の歩んできた人生の挫折を、味わってきた苦しみを、ぜんぶさらけ出して歌っているのだよ。

それなのに、「泣いてもしょうがないから、僕らは歌うか笑うかしかない」なんてことを言って、本当に溌剌と笑っているんだよ。

 

それがあんまりにも美しくてね、櫻小町さんの歩んできた人生をたくさん想像して、それでも伸びやかな、どこまでも通る声で歌う姿を見て、僕は本当に涙が止まらなくなってしまった。音楽の本質を見た気がした。

 

だから、自分の演奏が始まる前には,もうかなり顔も喉も鼻もぐしゃぐしゃになってしまっていた。

 

でも、そのおかげか、いつも以上に自分の書いた歌詞を、噛み締めるように、ちゃんと届くように歌えたような気がする。

 

昨日は珍しいぐらい盛大なミスをしてしまったのだけど、それでも自分の伝えたいことがとめどなく溢れてきた。母親が自殺したこと、鬱になったこと、学校に行けなかったこと。そこまで言わなくていいだろ、ってところまで踏み込んでしまった。それでも全部言いたくなった。

 

お客さんの反応なんかもうどうでもいいと思いながら歌って、話した。

それなのに、昨日SLYにいた人たちはみんな本当にあたたかくて、僕が吐露したそんな子供じみた思いを、わかるよって頷きながら聞いてくれていた。

 

終演後、お子さんと一緒に来ていたお客さんがハグしてくれた。すごくあたたかかった。

母の立場から聞いてくれた人が、涙を湛えながら「あなたのお母さんも、あなたに幸せになってほしいと願っていると思う」と言ってくれた。

それを聞いて、また涙が出てきた。それは、僕がずっと母に言ってもらいたかったことだったんだと思う。

 

「自分も親とうまく折り合いがつかなかった」と打ち明けてくれた人もいた。

「自分も母親が自殺している」と打ち明けてくれた人もいた。

 

あの場所に集まったたくさんの後悔や寂しさが一つになって、まったく別の感情が生まれたような気がした。

自分が書けたのがこんな歌でよかった。この人生で、よかった。

 

 

僕はすぐ泣く。自分の身の上話なんかをして、泣きながら歌っていたりする。すごくみっともない思う。恥ずかしい奴だと思う。もういい歳だしもっと大人になれよって思う。

 

一方で、僕は音楽の中ではずっと子どもでいたいと思ってもいる。

 

最近はね、よく笑えているんだ。幸せだと感じることも増えているの。

 

それなのに、そう思う日が増えるほど、ライブをするとき、僕の中で眠っている幼い自分が、呼び起こされるようになった。

なんだか降霊術みたいだなと思うこともあるけど、それが結果としてあなたに届いてくれたら、それでいい。

 

けれど。

いつか、いつか櫻小町さんのように、こんな人生を笑顔で高らかに歌えるようになりたいなとも思った。

 

SLYが本当に大好きな場所になった。大好きな場所が、これからもずっと続いていってほしい。

 

生きていると、嫌いなものにたくさん出会う。けれど、それ以上に好きなものが増えていく。これからも、好きな人や好きな場所を増やしていきたいよ。