怪文書

やさしさのメモリ

感染症にてんやわんやの世の中で、演奏を披露する機会をいただいた。またしても無観客配信ライブで、お客様との面会は叶わない。しかし、久方ぶりに演奏できることを嬉しくも思う。と同時に、不安で仕方がない。 よからぬ想像ばかり拵え、眠ろうとすればする…

夏の庭

人が死ぬところを、初めて目の当たりにした。 執拗なまでに雨が降り続ける長梅雨がようやく明けたのは、七月末のことだった。梅雨の終わりには、いつも腹立たしいほどの青空が広がっている。大雨は各地に甚大な被害を与えたが、そんなことは歯牙にもかけない…

穏やかな日々

ここ最近ちっともギターが上達しない。新しい技を覚えても自分の曲に落とし込めるほど磨けない。ライブをしなくなって、スタジオに入らなくなって、音楽に対して少しずつ無関心になっていく。 ついでに本もめっきり読まなくなって、とことん言葉に大雑把にな…

school girl complex

こんな僕も、かつては高校生だった。 当時の僕は、今となっては信じられないほどバイタリティに溢れていた。 毎日が面白くて、仕様がなかった。 自由奔放な人だらけでてんでまとまりがないクラスも、お互いの価値観を認め合い、技を高め合った軽音楽部も、毎…

春の歌

‪件のなんとかウィルス。麦酒みたいな名前のウィルス。そういえばあの麦酒、大学生の時に初めて飲んだのは、大好きなハンバーガー屋だった。 僕はそれまで、日本製の麦酒ばかり飲んでいたんだ。けれどメキシコ産まれのそれに小さくカットしたライムを入れて…