ハンドボール大会、
百円ショップのインソール。
バスドラムの揺れ方で人生の意味がわかった日曜日。
たとえばそう、動く歩道を降りた後のあの感じさ。
たとえばそう、マックで紅茶を頼んだときにティーバッグが二つ付いてきて絶対に一個持ち帰るあの感じさ。
ミュージックビデオの撮影を終えた僕らは、午前1時に銭湯に駆け込んだ。蕩々と他愛ない話を交えながら湯を巡り、風呂上がりには揃ってコーヒー牛乳を飲む(ただし服部さんは飲むヨーグルトを飲んでいた)。
僕が間抜けな顔をして、
「もう二十七歳にもなりますが、なんだか青い春ですね。」と呟くと、
千葉さんは青春って意外と終わらないんですよねえ、と静かな調子で返した。
もしも長生きして、今日のような体験をできない環境になってしまったとしたら、僕は辛気臭い顔をして
「あの頃はよかったなあ」
なんてことを言うのだろうか。
そんなことを考えながら、昼食を食べ終え、マクドナルドを出た。
するとそこには、壮年の男性が三人、バイクを停めて談笑していた。冬の晴れ間がよく似合うほがらかな風景だった。
僕たちは、長生きしたくないと考えていながら、一日に二度ラーメンを食べることを躊躇う。
早く死にたいなんて言いながら、いつまでも健やかに笑う老人に憧れる。
この国はもうお終いだと言いながら、この国から出ることもない。
人のそんな矛盾や淀みを、いつかきちんと愛せますように。