嵐のあと


台風がいなくなった。洗い立ての青空は、どこまでも透き通っていて、陽射しも強かった。

 


伊勢湾台風並みの勢力とまで謳われた台風の名前は「チャーミー」だった。

 

僕の足は近所の郵便局へと向かっていた。もう10月の頭だというのに、歩いているだけですこし汗ばんだ。数日前に長袖のシャツを買った僕は、それを着るのを楽しみにしていた。けれど今日は半袖の服を着ていてもまだ暑いと感じた。

空は雲一つなく、潔癖なまでに映えていた。こんな空を見ていると、世の中にとっての不純物であると自覚している僕はたちまち消え入りそうになってしまう。排他的で、正常であることに確執する世界のどこに自分を受け容れるスペースがあるのか、僕にはよくわからなくなった。

 


近所の小学校では運動会の予行演習でもしているらしく、たどたどしい子供のアナウンスは僕の耳にも届いた。

僕がぼーっと歩いていると

「最後まで頑張って走ってください。」というアナウンスが聞こえた。

無慈悲な言葉だと、思った。

まだ何も知らない子供のそんな声が、妙にちくちくと胸に刺さる秋の陽気だった。