2018/01/21 奈良NEVER LAND

頭がふらふらとする。昼に、NOROMAという小洒落た名前の拉麺屋に入った。ここの鶏そばは、じつに美味であった。わたしのこころは肥えていた。こんな美味いものを食う贅沢にうつつを抜かしているから、こころが肥えるのだ。こころが肥えた人間のうたは、果してだれに刺さるというのだろう。薄暗い照明が照らす舞台から逃げるように、転げ落ちるように、わたしは舞台を去った。わたしは張り詰めた糸でかろうじて操られている人形だった。その糸が弛んだ瞬間、操り人形は崩折れた。死にたいとおもった。生れてきて、すみません。わたしは劣っている。彼奴よりも、彼女よりも、彼よりも、君よりも、お前よりも。劣っている。劣っている。恍惚としたあたまで辛うじて、いまの自分を表現せねばと、ようわからん義務感に駆られた。無責任にも、わたしはひんやりとした車にひとり戻り、ぐらぐらと世界を揺らすあたまを横たえた。しばらくは柔らかな毛布の感触に甘えていたが、眠くなる気配はいっこうなかった。寝ようとすればするほど、音が聞こえてくるのである。この三日間のうちに聞いたさまざまな言葉や歌が、脳裏を掠め、内耳に響き、わたしはその騒がしい静寂につつかれて発狂しそうになった。しばらくしてから、わたしは何か腹拵えをするべきなのかもしれぬと思い始めて、コンビニエンスストアへ向かった。何か買おうとおもったところで尿意を催し、御手洗いを拝借した。潔癖症を患うわたしは直接便器や扉の取手に触れぬよう細心の注意を払いながら用を足した。手を洗いながら鏡を見上げて、驚愕した。汗と寝ぐせでわたしの髪の毛は四方に散り、コートを着込んだその姿はもはや浮浪者のそれと遜色ないのである。わたしはもはや寝る資格さえ失ったとみえて、栄養ドリンクだけを買って店を後にした。