2018/01/12 八王子RIPS

実に勝手なイメージで、ぼくは八王子はもっと都会だと思っていた。

高速を降り、中途半端に栄えた町並みを潜り抜けて、目の前に現れたのは、やはり中途半端に栄えた地方の都市のような場所だった。

 

八王子RIPSはあたたかいライブハウスだった。バンドマンとブッカーさんとの交流が、殊に心地よかった。

 

八王子のバンド達の音はどこか懐かしくて、所謂2000年代を彷彿とさせた。ぼくの楽団も、目新しい音を鳴らしているわけではない。その点で、彼らとはやはり仲良くなれそうな予感があった。

 

93°とはもうなんど、おなじステージに立ったかわからない。なんどもおなじステージに立つたびに、彼らの音は良くなっていく。ちかごろは、彼らの音がとても心に刺さる。

 

打ち上げでは久々に、アルコールハラスメントを経験した。けれど、きょうのアルコールハラスメントは、どこか心地よかった。自分のぬるさに、反吐が出そうになる。

 

ぼくらは明日のために、都心部まで移動した。

都心の金曜夜の漫画喫茶の倍率は、いやに高い。

ぼくはひとりで、勝手にカプセルホテルに入った。人生ではじめての、カプセルホテルだった。そこでは妙な感動がぼくを待ち受けていた。

 

家畜のように小さな部屋にひとりひとり閉じ込められる空間より、寝床に流れ込んでくる知らない叔父さんのいびきより、ぼくが衝撃を受けたのは歯磨き粉の味だった。

 

使い捨て歯ブラシに付随している、小さな歯磨き粉からは、山奥にある旅館のそれとまるで変わらない味がした。

恐らくは安っぽい、はっか特有の味。鼻腔に突き抜ける、ありふれた清涼感。

旅情は、東京都心の、こんな場所に転がっていた。

それはもしかしたら当たり前のことなのかもしれないが、ぼくにとってはきょう一番の幸福だった。

 

知らない叔父さんのいびきを聞きながら、きょうのライブのことを振り返る。

なんだかもっと、暗くて重たいライブがしたい気分だった。

ぼくは口に残ったはっかの残り香を、いつまでも味わっていた。

 

 

セットリスト

1. インスト

2. ロクショウの空に

3. TNT

4. hayari

5. ペルソナ

6. グッドウィルハンティング